さまよう三人
馬の背の先は板宿まで緩やかなくだりが続くはず,古い記憶ではそうなっている.
この古い曖昧な記憶がいくつかの混乱を招くこととなった.
進むべき道は図の④なのだがさまよい歩いた①から③を順に示す.
①南への緩やかな下り,を意識するあまり東山手前で水野町方面への碑に従い南進.
しかし進むにつれて踏み分け道は枯葉で覆われ緩やかな他の山肌と区別ができなくなり辿るべき道を見失う.しばし右往左往する中で勘の鋭いキリが不安を募らせる.
②緩やかな下りしか記憶に残っていない私は東山など越えただろうか,と思いつつ小さな峠(東山)への登路を進む.東山山頂では意外と多くのハイカーが休憩している.その混雑の中進むべき道が見えたのでそちらへ進む.しかし進むにつれ日陰が多くなり明らかに北斜面を辿っていることに気づく.何か違う,おそらくこの道も違う,しかし他に道はあっただろうか?と自問するが答えが出ない.5分ほど歩くがやはり違うぞと引き返す.
キリに不安とトーサンへの不信が募る.低い峠とはいえ小男にとってはよじ登り這い上がる箇所が多い.自ずと疲労が伴い抱っこをせがむ.小男を抱くとキリが不満を抱く.疲れと不安と不穏な緊張が粘度の高い膠質溶液のように3人を包む.
③再度東山山頂方向へ向かって歩き,相変わらず混雑しているピークを馬の背方向へ下る.見逃した枝道がありはしないか周囲に目を配る.しかし枝道などなく先ほどの水野町方面の分岐までたどり着く.
やはりおかしい,どこで見落としているのだろうか.